Samsung Electronicsは2026年7月25日、サンフランシスコで開かれたAIサミットで米Broadcomと了解覚書(MOU)を締結したと発表した。対象はメモリ・ファウンドリ・パッケージングの3分野の協業拡大で、契約期間は2030年までの5年、想定規模は2000億ドル(約30兆円)超に及ぶ。

ただしMOUは法的拘束力がない。JPモルガンのハーラン・スル氏の試算では、Broadcomの購入構成の90〜95%は高帯域幅メモリで、ファウンドリは5〜10%にすぎない。この内訳が判明した後、Samsungの株価は28日に13.4%下落し、終値22万ウォンと約20年で最悪の1日下落幅となった。

総額2000億ドル超、内訳はメモリ90〜95%とファウンドリ5〜10%

MOUの対象範囲は、次の3領域に及ぶ。

  • Broadcomの次世代AIアクセラレータ向け高帯域幅メモリ(HBM4、HBM4E)の供給
  • 韓国・平沢工場でのサブ2nm世代ファウンドリ受託製造
  • 2.3D・2.5D統合を含む先端パッケージング技術

Broadcomはグーグルやメタが採用するカスタムAIチップの設計を担っており、TSMCへの生産集中を分散する狙いがある。

一方、ファウンドリの内実は、大きな金額が示唆するほどSamsungの受注を押し上げない見方が強い。仮に2000億ドルの下限が実現しても、ファウンドリ分は5年で100〜200億ドル、年20〜40億ドル程度にとどまる。

この規模感は、Samsungが直近に締結したTesla向け165億ドルのファウンドリ契約と同じ水準にとどまり、TSMCから受託を大きく奪うにはなお乖離がある。

Samsung株は28日に13.4%急落、TSMC追撃には歩留まりが壁

Samsungの株価は発表2営業日後の7月28日に13.4%下落し、終値22万ウォンとおよそ20年で最悪の下落幅となった。ts2.techによると、下落の主因はMOUの内訳がメモリに偏り、ファウンドリ受託の拡大幅が想定以下と受け止められたことだ。

一方Broadcomの株価は同じ7月28日に約3%上昇した。TechTimesは、AIチップの受注残拡大が投資家の信認につながっていると報じている。

競争構図は依然としてTSMC優位が続く。ts2.techのまとめでは、Samsungのファウンドリ市場シェアは約7〜8%で、TSMCの72〜73%とは大きな差がある。Samsungの2nmプロセス歩留まりは50〜60%とされ、TSMCの80%超と比べて改善余地が残る。

前向きな要素と課題は次の通り。

  • 前向き材料: Broadcomという大口顧客の長期需要確保、HBM4/HBM4E受注で先端メモリ収益の見通し改善、平沢工場の稼働率押し上げ余地
  • 注意点: MOUで拘束力なし、ファウンドリ内訳は5〜10%と限定的、2nm歩留まりはTSMCと開き、市場全体はAI投資過熱と中国メモリ増産のリスクを警戒

韓国政府主催AIサミットが背景、需要移転はまだ限定的

MOUは、韓国の李在明大統領がホストしたサンフランシスコAIサミットで発表された。参加者にはSamsungのファウンドリ事業社長ジンマン・ハン氏、Broadcomの社長兼最高経営責任者ホック・タン氏、両社幹部と韓国政府代表が名を連ねた。

TheNextWebによると、同サミットでは半導体分野で総額約9500億ドル規模のパートナーシップが発表され、SKハイニックスのメモリ関連協定も7500億ドル相当に達した。韓国政府は5年でメモリ生産能力を2倍にする目標を掲げ、AI外交で米国顧客との長期需要を囲い込む姿勢を鮮明にした。

ただし、ファウンドリの構図に大きな変化はまだ起きていない。ts2.techは「先端ファウンドリ需要が2000億ドル規模でTSMCから移ったことにはまだならない」と評価している。BroadcomのAIチップ主力ノードは引き続き台湾TSMCで生産されるとみられる。

今後の展望

次に確認すべき点は3つある。第一に、MOUに基づく実発注が5年でどこまで積み上がるかで、Samsungの四半期決算資料やBroadcomの外部委託先開示が判断材料になる。

第二に、Samsungの2nm歩留まりが70%台へ改善するかで、遅れれば大口Broadcom案件も限定的な規模にとどまる。

第三に、韓国政府主導のAI外交で、Samsung・SKハイニックスに追加の対米長期契約が積み上がるかが焦点だ。

今回の合意は「TSMC一強への挑戦状」というよりも、メモリ需要を長期契約で確定させたうえで、ファウンドリ受託を実力で押し広げる段階への入り口と見るのが妥当だろう。

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