NVIDIA(エヌビディア)取締役会は2026年9月28日、既存の自社株買いプログラムに1500億ドルを追加承認したと発表した。同社発表によると既存の残枠を合わせた承認残高は2350億ドルに拡大し、2028会計年度(FY28、2028年1月末終了)までの実施を予定する。単一の承認増額としては過去最大と報じられ、これまで最大だったAppleの2024年5月の1100億ドルを上回る。
CNBCなど複数の報道によれば、発表当日9月28日の通常取引で同社株は約3%上昇し、終値は228ドル前後で推移した。時価総額は5兆ドル台の水準にある。同社最高財務責任者(CFO)のコレット・クレス氏(Colette Kress)は、FY28売上が前年比約7割成長する「供給制約下の見通し」を示した。
画像: Wikimedia Commons「Nvidia campus aerial」より (Dicklyon / CC BY-SA 4.0) | 出典
実施はFY28末まで、既存残枠と合算で2350億ドルの枠に
同社発表によると、追加承認1500億ドルに既存の残枠約850億ドルを加えた合計2350億ドルが、FY28末までに実施される見通しだ。NVIDIA最高経営責任者(CEO)のジェンスン・フアン氏(Jensen Huang)は発表文で「同社の成長は一世代に一度のAIプラットフォーム移行に支えられている」と述べた。
クレス氏はこれに先立ち、直近のFY27第2四半期(2026年5〜7月期)に自社株買い200億ドルと四半期配当60億ドルの合計260億ドルを株主に還元済みだと投資家向けに説明していた。四半期あたり200億ドル前後の実行ペースが続けば、2350億ドルの残枠は約3年でほぼ使い切る計算になる。
Apple超えの規模、ただし1株利益への効果は段階的
好材料は、記録的な資本還元でも成長投資を維持できる財務体質だ。単一の自社株買い承認額としてこれまで最大だったのは、Appleが2024年5月に発表した1100億ドルで、翌2025年5月の1000億ドルが2位だった。NVIDIAの1500億ドルは、Apple自身が持っていた過去最大の記録を約36%上回る規模になる。
CNBCの番組ホストで投資家のジム・クレイマー氏(Jim Cramer)は「毎日買い付けが入るなら、株価トレンドを変える力がある」とコメントした。ただし、時価総額5兆ドル台の企業では自社株買い1500億ドルでも発行済み株式総数の約3%相当にとどまり、1株利益への直接的な効果は段階的に表れる。
一方の懸念は割高感と需要ピーク観測、24倍のPERが焦点
市場が同時に確認している懸念材料は2点ある。第1に、単一の承認増額として過去最大となる規模ゆえに、需要ピークを織り込んだ株主還元だとみなす市場参加者もいる。第2に、FY28売上7割増の前提はAIハイパースケーラーの設備投資計画が現行水準で持続することで、金利や規制環境の悪化には脆い。
24/7 Wall Streetの記事では、NVIDIAは予想利益の約24倍で取引されており、「一世代に一度」のAIけん引役という位置付けを踏まえれば市場は割高感を織り込みきっていないとの見方があるとされる。ただしこの水準は、同社が今後数四半期のガイダンス通りに需要と粗利率を維持できることが前提となる。
今後の展望 — 次に見るべきは実施ペースと粗利率
次に確認すべき指標は、11月中旬発表予定のFY27第3四半期決算における実際の自社株買い実施額、FY28売上見通しの上方または下方修正、そしてデータセンターセグメントの粗利率の3点だ。承認額はあくまで枠であり、実際に買い戻す株数は経営判断による。
AI需要の持続性を見るうえでは、ハイパースケーラーの設備投資計画やGPU向け電力供給制約の解消状況も焦点となる。9月上旬発表のOracle決算では、AIクラウド受注残の急拡大とキャッシュフロー悪化が同時に確認されている。NVIDIAの記録的な資本還元がAI設備投資サイクルのピーク到達を示すのか、次の需要局面への通過点なのかは、次回決算の実測値で見えてくる。
出典:
- NVIDIA Announces a $150 Billion Share Repurchase Authorization Increase | NVIDIA Newsroom
- Nvidia share buyback plan gets $150 billion boost | CNBC
- Nvidia announces jaw-dropping $150 billion stock buyback, largest single authorization in history | Yahoo Finance
- NVIDIA Boosts Buyback To $235 Bln Through FY28; Shares Gain | RTTNews
- Apple's $110 Billion Stock Buyback Plan Is Largest in US History | Bloomberg
