5月26日の米国株式市場で、半導体メーカーのマイクロン・テクノロジー(Micron Technology)株が前日比19%急騰し、時価総額が一時1兆ドルを超えた。きっかけはUBSのアナリスト、ティモシー・アルクリ氏(Timothy Arcuri)が同社の目標株価を535ドルから1,625ドルへ3倍に引き上げ、ウォール街のアナリスト目標として最高水準としたことだった。

主要株価指数も追随し、S&P 500は7,519.12、NASDAQ総合は26,656.18でいずれも終値の過去最高を更新した。一方でダウ平均は0.23%下落しており、上昇が大型ハイテクと半導体銘柄に集中した一日となった。

米国の経済メディアMotley Foolが伝えた当日の市場まとめでも、半導体主導の偏った相場展開だったと整理されている。

画像: Nasdaq MarketSite, photo by ajay_suresh / CC BY 2.0 | Wikimedia Commons

メモリ半導体メーカーで時価総額1兆ドル超えは、サムスン電子に続く2社目だ。米企業時価総額ランキングでも11位に浮上した。

フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は2026年初から65%超上昇し、過去23営業日のうち22日でプラスとなる異例の連騰局面にある。

UBSの強気シナリオ、HBM完売と長期供給契約が背景

UBSの分析は、人工知能(AI)向け高帯域メモリ「HBM」の需要を軸に組み立てられている。アルクリ氏は調査メモで、2026年のHBM4生産が事実上完売し、ハイパースケーラー各社との長期供給契約(LTA)で価格と需要の見通しが固定されたと指摘した。

同氏はさらに、2027年から2029年にかけて累計4,000億ドル超のフリーキャッシュフローを生み出すと予測し、1株利益見通しを大幅に上方修正した。

目標株価1,625ドルは現株価約896ドルに対しても80%超の上昇余地を示唆する水準で、市場のアナリスト目標としては最高となる。

メモリ業界全体でも、HBMを量産できるのは同社とサムスン電子、SKハイニックスの3社に限られる。AI向けデータセンター需要の拡大で、生産能力と価格決定力が稀少資源となっている点が、評価額の急拡大を支えた。

ヘッジファンドは半導体に総取り、モルガン・スタンレーは撤退

強気論の裏で、ポジションの偏りに警戒する声も増えている。市場分析メディアThe Kobeissi Letterが13F届出データを基に集計したところ、世界のヘッジファンドが保有する半導体株のエクスポージャーは総市場エクスポージャーの19%に達し、過去最高水準となった。

機関投資家の動きはまだら模様だ。サスケハナ・インターナショナル・グループは半導体ETF「SOXX」の保有株数を5倍以上に積み増した。

一方でモルガン・スタンレーは236万株のポジションを完全に解消し、足元の上昇に対する慎重姿勢を示すサインとして受け止められている。

複数のベテラン市場関係者は1999年から2000年にかけてのドットコムバブルとの類似を指摘し、25〜30%規模の調整リスクを警告している。半導体株指数の上昇が市場全体を牽引している局面だけに、いったん調整が起きた場合の影響は広範に及び得る。

過去最高値はテック集中相場、原油低下と中東緊張緩和が同居

主要指数を押し上げたのはAI関連株だけではない。原油先物と米国債利回りが揃って低下し、リスク資産の上昇余地が広がった。背景には、米国とイランの交渉進展でホルムズ海峡情勢の正常化が意識されていることがある。

ただしMotley Foolは、地政学的進展について「まだ初期段階だ」と慎重な姿勢を示している。テック株の時価総額集中、インフレ、長期金利の不安定さも、指数高値圏での懸念材料として並べて指摘されている。

ヘルスケア関連の主要銘柄ではユナイテッドヘルス・グループとメルクが下落し、ダウ平均の重しとなった。同じ日の取引でも、テック・半導体とディフェンシブセクターの方向感は割れている。

今後の展望

次に確認すべき点は3つに絞られる。1つ目はメモリ大手の四半期決算で、UBSが前提とする粗利率と価格上昇の持続性が実際の数字に表れるかが焦点となる。

2つ目はHBM4製品の実供給と、ハイパースケーラー各社の設備投資ガイダンスだ。AIインフラ需要が中期的に持続するかを測る目安になる。3つ目は、ヘッジファンドのポジションがどこまで膨らみ、巻き戻しの兆候が見えるかで、半導体株指数の連騰が止まるタイミングや、モルガン・スタンレーに続く撤退の動きが広がるかが鍵になる。

米国の経済指標と利下げ観測も、リスク資産の評価額に影響する要素として並行して確認しておきたい。本記事は売買判断を示すものではなく、市場が何を確認しているかを整理することを目的としている。

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